2019/07/09[tue] update

MOVIEコラム 学生生活が過ぎる前に、私は映画館に行く scene29

現在好評公開中の話題のアニメーション映画『センコロール』。この作品は、なんと宇木敦哉監督がほぼ1人で制作。将来は「映画の配給関係か放送作家になりたい」という夢を持つ札幌の現役高校生が、そんな宇木監督にインタビューを敢行しました。

●インタビューした学生

高校1年生/藤野勇希さん
映画館で年間100本以上の作品を観る札幌の現役高校生。

「自分の描いた絵を自分でアニメにできるんだ。すごい!」
と、思っていたのがアニメーション制作のキッカケです

藤野勇希さん(以下敬称略):2009年に『センコロール』を創り出されてますけど、そもそもアニメーションを制作したキッカケはなんですか?
宇木:ちょうど大学入った頃にiMacとかPowerMac G4が出てきて「個人でもデスクトップ上で映像が作れる!」みたいなムーブメントがあったような気がします。そういう雑誌もたくさん出てきた頃で。大学の研究室にも映像作れる環境が整ってきたので、自分も作ってみようかなと。単純に「自分の描いた絵を自分でアニメにできるんだ。すごい!」と思っていたのが、キッカケです。

藤野:大学卒業後、すぐに『センコロール』の制作に取りかかったのですか?
宇木:大学を卒業したあと特に就職はせず。その頃に大学の先輩がCMやウェブサイトとかを作る会社を起業していて、しばらくはそこでバイトさせてもらっていました。『センコロール』の制作は05年くらいから始めました。東京動画革命という東京都の支援で若手クリエーターを発掘、育成する事業があり大学の卒業制作を観てくれた人が「動画革命で1本作りませんか?」と声をかけてくれたのがキッカケです。そこでパイロット版・本編を作りアニプレックスさんの配給で09年に公開という流れです。

藤野:『センコロール』って、ちょっと青春ドラマの中に怪獣映画の要素が入ってきますね。
宇木:割と自分の好きな要素で作ったっていうのが一番大きいですね。怪獣みたいなのは出てくるですけど、パニックムービーが好きじゃないとか…そういうバランスで作っていったという感じですね。

藤野:怪獣映画は好きだけどパニックムービーは好きじゃないのですね(笑)。
宇木:人が「ワ―キャー」言いながら逃げるというのは、あまり気持ちが燃えないというか。怪獣映画だとそういうシーンは鉄板だと思うんですけど、僕はそういう要素よりも割と日常っぽい空間に巨大な怪獣がポンと出てくるみたいなシチュエーションがすごい好きなんです。

東京に行かないと何もできないという時代でもなくなってきてると思う

藤野:ユキとテツがセンコの中へ吸い込まれたときに、ユキがパッとスカートの中を隠す描写ありますよね。そんな日常的かつ感情的な演出が細かくて好きです。本来であれば、パニックになるところでそんなことを気にしている場合ではないじゃないですか。宇木監督が仰っているシチュエーションというのは、そういうことなのかなと、今思いました。(笑)。
宇木:僕は、意外と人間そういうことをしちゃうんじゃないかと。異常な状況下でも肌が見えるのが恥ずかしいとか、長年染み付いた常識は消えないというか。たとえ人が死ぬ瞬間でもそういうのあるのかなと思っているんですよね。

藤野:なぜ東京ではなくて札幌で活動しようと思ったのですか?
宇木:ネットがどんどん便利になってきてますし、東京に行かないと何もできないという時代でもなくなってきてると思うので、活動場所は特に気にしたことはないです。東京のスタジオさんにはお世話になりつつも『センコロール』(09)は札幌に居たままでも作れたので、今回もそのまま札幌で作業してます。

藤野:先ほど大学を卒業した時点で「漫画を書きたかった」とおっしゃっていましたが、大学も美術科でいらっしゃって、最初から漫画家やアニメの道に進もうと思って大学は選ばれたんですか?
宇木:就職のことまで考えてはいなかったんですが、絵を書くことが好きだったので、そういうことが学べる大学へ行ってみようかなと。親に相談しても「まあいいんじゃない」とサラッと言ってくれました。

藤野:私の先輩にもデザイナーやフリーランスで映像の仕事をしている人がいて、「上京したほうがいいのか」問題や「札幌にいても、仕事がない」という話を聞きます。そんな中、道内在中の宇木さんが、全国で配給される規模のアニメーションをつくられたというのは、励みになると思うのです。ただ、宇木さんご自身も、地方(北海道)と都市(東京)の差を感じたり、モヤモヤしていた時期はあったんですか?
宇木:大学卒業したくらいの時期はとにかく絵の仕事をしたかったんですが、道内でそういう仕事を求めるのは実績もツテも無い自分には無理だったので、漫画を(東京の出版社さんに)投稿したりポートフォリオを見せたり…みたいなことはしてました。『センコロール』(09)で少し自分のことを知られるようになってからは絵関係の仕事もぼちぼち入ってきて。そこからはメールやネットで完結できるので地理的なことは気にならなくなりました。『デジモンアドベンチャー tri.』シリーズ(15〜)の仕事も札幌でやれています。

藤野:中央部(東京)に移動しなくてもできているということですか?例えば、アニメと実写だと、状況は変わるのでしょうか?
宇木:実写のことは専門外なのでわからないんですが、アニメーションの場合は遠方とのやり取りでもデータさえ揃っていれば完成はするので、個人的には場所にこだわる必要はないと思ってます。

俺にはこれしかないんだと自分を追い込んでいくというのは、あまり賛成しないですね

藤野:北海道でアニメーションの世界を目指している学生へメッセージをお願いします。
宇木:いまは、SNSとかで自分の絵だったり映像だったり漫画だったりなんでもいいんですけど、そういうのを発信できる場所があるので「東京に出てやるぞ!」というよりは、今いるところで無理しないでどちらかというと制作の方に力を入れてウェブなりで発信していく。結果誰かの目に留まって東京行く機会もあるかもしれないし、自分みたいに地元で制作を続ける道もあるだろうし。そこは個人の自由だとは思うんですが、あまり(活動の)場所が重要だとは思っていないです。せっかくインターネットの時代なので。

藤野:場所のせいにするな、みたいなことでしょうか?
宇木:そこまでではないですね(笑)。行きたい人は行ってもいいと思うんですけど、割と退路を断っていくよりは日常の生活に足を付けるというか、生活を成り立たせながらも創作活動はできるわけだし、身近な人でクリエイティブ方面で成功している人とか、普通にサラリーマンやりながら漫画書いてて、漫画が軌道に乗ったら会社辞めますみたいな、そういう人の方が長続きする気はすると思います。俺にはこれしかないんだと自分を追い込んでいくというのはあまり賛成しないですね。

藤野:今後これに挑戦してみたい、などはありますか?
宇木:しばらく描いてなかったので漫画とか、短めのアニメも作りたいですね。


宇木 敦哉(うき あつや)
北海道出身、北海道教育大学美術科卒業。大学卒業後の2005年にアフタヌーン四季賞夏のコンテストにおいて『アモン・ゲーム』が四季大賞を受賞。若手アニメクリエーターを発掘、育成する事業である動画革命東京の第1期支援作品に選出され『センコロール』をほぼ1人で制作。同作は2009年8月22日に公開され、平成21年度(第13回)文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品アニメーション部門/短編に選ばれた。

『センコロール コネクト』
札幌シネマフロンティアで絶賛公開中

突然、札幌市内のビル屋上に現れた謎の白い生物を“センコ”と名付けた高校生のテツは、センコの変身能力を使いながら生活していたが、その秘密が同じ高校に通うユキにバレてしまう。ある日彼らの前に、センコの変身能力を狙う謎の少年シュウが現れ騒動になる。さらに、少女カナメがシュウを追ってやって来る。
声の出演:花澤香菜(ユキ)、下野紘(テツ)、木村良平(シュウ)
監督:宇木敦哉
公式サイト:https://www.cencoroll.com/
(c)宇木敦哉/アニプレックス (c)2019 宇木敦哉/アニプレックス