2017/04/17[mon] update

シンガーソングライター 大森 靖子さん

家と学校だけが世界じゃない。
バイトが教えてくれました。

シンガーソングライター 大森 靖子さん
取材協力/どさんこマルシェ179(札幌市中央区南3条西4丁目J-BOXビル 3F)
ガーリーだけどロック。紡ぐ歌詞は毒々しいけれど救いがある。音楽界で突き抜けた存在感を放つシンガーソングライターの大森靖子さんが、彼女らしい言葉でアルバイト経験を語ってくれた。

オーダーを効率良く
料理するのが心地良い!

時に激情派と呼ばれ、天真爛漫なライブパフォーマンスや発言でも世間を驚かせる大森靖子さん。どんな人なのだろう。取材陣の胸中には自由な人柄ゆえの不安と期待が入り交じっていた。
約束の場所に現れた大森さんは小柄で実にキュート。一体どこに激しいライブや活動を繰り広げるパワーが…と思いきや人を真っすぐ射抜く瞳の奥に、揺るぎない芯の強さがうかがえる。
大森さんの音楽の原体験は幼少期。「SPEED」をはじめ、小室哲哉氏がプロデュースする女性アーティストにあこがれを抱いた。小さな時から歌うことが好きで、スプーンをマイクに見立ててお気に入りの曲を口ずさんでいたと笑う。けれど、小学生のころに一度歌手になることをあきらめたという。一体なぜ?
「沖縄アクターズスクールじゃないと歌手になれないと思い込んでいて…私は愛媛出身だし(笑)。あと、『モーニング娘。』に同い年の辻さんや加護さんが加入して、キラキラと活躍する姿を見ていると、自分には到底無理だな〜と」
とはいえ、音楽や歌はずっと好きだった大森さん。高校生になるとバイトを始め、CDやライブのチケット代を自らの手で稼ぐようになった。初めての職場はファミレスのキッチン。実は学校がバイト禁止だったため、店内からは見えづらい厨房の仕事を選んだのだと苦笑する。
「混雑時にオーダーを見ながら、このメニューだったらハンバーグを先に3つ焼いておこうみたいな感じで効率を考えて作業するのは楽しかったです。ただ、高校生の時給は大学生や専門学生より低くて、絶対に自分のほうが働きっぷりは上だって自信があったから納得がいかなかったなぁ(笑)」
当時の率直な気持ちをさらりと言葉にするあたりも大森さんらしい。バイトは高校を卒業するまで続け、その後は絵を描くことも好きだったことから、表現者を目指して東京の美術大学に進学した。

大好きなコンビニで、
深夜のバイトをスタート!

大森さんの大学時代は暗黒期だったという。彼女は美術大学といえば作品制作に没頭している人ばかりだと思っていた。が、「実際は飲み会も結構あるし、軽音学部をのぞいてみたら美大なのにオリジナルじゃなくてダサいコピーバンドだし(笑)。勝手に失望しちゃって」と鋭い一言。学校では友人が出来ず、さまざまなライブへと一人で足を運ぶようになったそうだ。そして19歳のころ、よく見に行っていたバンドに誘われてボーカルを始めた。
「だけど、私がやりたいことと全然違う音楽性だったから、自信を持ってライブを見てほしいというスタンスでもなく…。ホントは人間の汚い部分もキレイに肯定するような音楽を届けたいと思っていたから、コツコツと自分の楽曲を作り始めました」
大森さんは音楽活動を始めたのとほぼ同時に、コンビニの深夜帯でバイトをスタート。眠れない夜を過ごすことも多く、外に出ても人の姿がない暗闇の中で、光を灯し続けてくれるコンビニの存在自体が大好きだった。そこで、どうせ寝られないならと、働いてみることにしたのだ。
「コンビニの深夜帯って、働く人も何かを成し遂げたいと思っているケースが多いかも。演劇で大成することを夢見ていた仲間とか、昼間はパチンコで一攫千金を狙っている同僚とか(笑)。二人一組で10時間くらい一緒に働くので、話すこと欲しさに1円パチンコをやってみたりしましたね」
深夜には独特な雰囲気の常連も通っていたそうで、毎日夜の2時に発泡酒を必ず3缶買っていく男性が印象的だったとか。「だって、頻繁に彼女が変わるし、どの子も態度が悪くて。顔立ちは端正なのに女の趣味はどうなってんだって思ってました」といたずらっぽく笑う。大学卒業後は高円寺に引っ越し、ソロの弾き語りスタイルでライブを始めた。

毎日ライブだったから、
バイトが長続きしない!?

大森さんは学生時代、親から家賃の仕送りをもらっていたことを「甘え」だと考えていた。後ろ盾があるから売れない、もっと苦しい場所に自分を追い込まなければならない、と。
「大学卒業後に自分の力だけで音楽活動をするようになり、ようやく歌手としてのスタートラインに立てたような気がしました。当時は人の会話を楽曲のヒントにしようと喫茶店で働いたり、生活やライブ遠征費がギリギリだったから時給の高い居酒屋を選んだり。いろんなバイトを経験しました…けど割とすぐ辞めちゃって」
それもそのはず、当時の大森さんは毎日ライブに出て歌っていたという。観客は一日一人の時もあれば、十人ほどが集まったことも。決して数は多くないが、「私は売れるって根拠のない自信があったんです」と、コツコツとチケットを手売りした。その努力が実り、2013年には音楽事務所の目も数多く集まるライブハウス「渋谷クラブクアトロ」でワンマンライブを開催、会場をオーディエンスで埋めつくしたのだ。インディーズレーベルにも事務所にも所属していない彼女がクアトロを満員にしたのは異例ともいえる出来事。それから、わずか一年後にはメジャーデビューを果たした。
「私の場合、バイトは人と話したり、同じ趣味を持つ仲間と語れた経験がプラスになりました。あと、大学の友だちはゼロだったけど、働くことで世界は家と学校だけじゃないんだって教えられて、ある意味で救われた気がするんです。バイトをすぐ辞めがちだった私が言うのも何ですけど、オススメの職場は好きな人がいる場所。だったら、長続きしそうだし、楽しいじゃない?」

★大森靖子さんの思い出バイト★

ファミレス
店長には好かれていたけど、そのおかげで女子のバイトスタッフからは無視されるようになりました(苦笑)。
コンビニ
常連さんが来店した時点でいつも買う新聞やタバコをサッと出しておき、一人で悦に入っていました。
喫茶店
イタリア帰りの料理長が「本場はこう!」と独善的で。でも、最近「あの時はゴメンネ」と連絡が来て、カワイイ人だなぁと(笑)。

<プロフィール>
大森靖子

愛媛生まれのシンガーソングライター。弾き語りスタイルでの激情的な歌が音楽ファンの間で話題を集め、2013年3月に1stフルアルバム「魔法が使えないなら死にたい」を発表。同年5月に渋谷クラブクアトロでワンマンライブを実施し、レーベルや事務所に所属しないままチケットをソールドアウト。2014年9月にエイベックスからメジャーデビュー。2017年3月にメジャー3rdアルバム「kitixxxgaia」をリリース。
オフィシャルサイト 
http://oomoriseiko.info/

<インフォメーション>

●最新リリース情報
「kitixxxgaia」
■[CD]〈マグマ盤〉
AVCD-93627 3,240円(税込)
■[CD+Blu-ray]〈ドグマ盤〉
AVCD-93626/B 6,264円(税込)
■[2CD+DVD]〈ガイア盤〉
AVCD-93624〜5/B 4,860円(税込)
●ライブ情報
「大森靖子 2017 LIVE TOUR “kitixxxgaia”」
(バンド編成)
7/7(金)
札幌 PENNY LANE24
開場/18:30 開演/19:00
お問い合わせ/Mount Alive
TEL 011-623-5555